2010年6月13日日曜日

vol.255 白洲正子の「十一面観音巡礼」を読んで 

 ツーリング・レポート「東海・旅の足跡」をお読みいただき、ありがとうございます。 

 昨日、「白洲正子の本に円空仏のことが出てくる」と荒子観音寺の御住職様から教わって、『白洲正子全集 第7巻』(新潮社)に収録された「十一面観音巡礼」を読みました。 
 以下、未読の方のために抜粋すると、
 「…その(私の心を打った)一つに、荒子観音堂の歓喜天がある。歓喜天とは聖天様のことで、男女の象頭人身の神が抱擁しており、左の象の頭に、飾りのようなものが見えるが、十一面観音の化身であろう。日本では鎌倉時代からはやりはじめ、今でも十一面観音を本尊とする寺には、聖天様を祀っている所が多い。円空も庶民の要求に応じて、異形の仏を彫ったのであろう。たしかにそれは奇怪な姿であるが、私が見た歓喜天の中では、一番美しい。(中略)…現代彫刻の中でも、男女の交りをテーマにして、このように爽かな作品は見たことがない。その単純な造形は、並々ならぬ手腕であり、彫刻の、いや人間のはじめの姿に出会ったような感じである。」

 上の写真は荒子観音にある円空仏の歓喜天です(撮影 後藤英夫氏)。 

 僕は「かくれ里」をはじめとする白洲正子の著作を今まで何冊か読んだことがある。それはまるで男の人が書いたかのような筋金入りの、骨っぽい文章といった印象を受けた。今回、「十一面観音巡礼」を読んで、円空仏の歓喜天を「人間のはじめの姿」と一太刀で言い切る白洲正子の「並々ならぬ」審美眼に圧倒されました。 

 「東海・旅の足跡」は東海地区で発売されている月刊誌『バイクガイド』に連載中のツーリング・レポートです。ご一読いただき、ご感想をお寄せいただければ幸いです。

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